ドナドナ

まあ、とりあえず売れただけマシなのであった。

国連の報告書で日本は「人身売買国」と指摘されているらしいが、それはまったくもって真実である。特にコンピュータ業界においては、もはやソフト よりは人の販売の方が盛んであると言っても良い。ソフトウェアなんか、作っても大した金額にならないのである。やはり、売るなら人だ。

というわけで、私もご主人様の手配するまま、行く先も知らず荷馬車に揺られるのであった。いつものことではあるが。ひどい場合には、売られた先で 何をやるのかすら判らない場合もある。というよりは、これこれこういうことをやる、と言われたとしてもそれがそのままである可能性はまずない。常に予定の 変更とか仕切直しとかが入って、ビリヤードの玉のような人生が続くのであった。

実は、前回の顧客様のところを色々あって首になった後、社内で色々とハンバ仕事をしていたのだが、そういう仕事をさせるよりは外で稼いでこい、と いうトップ(経営層)の意向と、いやいや社内でやって貰うという中堅幹部の意向が交錯して、私は社外の色々なプロジェクトの参加を打診されつつ社内でも リーダーで色々と押しつけられていたのであった。色々と言ってもハンパ仕事なのだが。

ハンパ仕事の方はいくらでもあるのだが、ピチピチの小牛ならともかく、年老いた駄牛を買ってくれるようなお客様はあまりないので、ここんところ社 内で仕事しながら面接に行かされては断られ、というのを繰り返していたわけである。これ、精神的にかなり凹むものだよ。しかも断られる理由ってのが「年齢 が高すぎる」(つまり、向こうからすると年輩の人にあれこれ指示したくない)とか「予算がない」(というのは口実かもしれないが)とかだと。

社内でハンバ仕事してたって、実績にはならない。いやなることはなるのだが、そういうのはやはり肩身が狭いわけである。特に私がいる部門は稼ぎ頭 なもので、とりあえず稼がなければ駄目なのである。そして、稼ぐ方法といえばやはり我が身を売り飛ばすしかないわけで、別に私が望んだわけでもないのだ が、とにかくトップの人たちは熱心なのだった。

ある時見覚えのない人がいきなり話しかけてきて、ドキュメント作成に詳しいそうで、とか丁寧に言うのではいはいはい大丈夫です何でもやらせて下さ いと熱意を込めて言っておいたら、次の週にいきなり某大銀行につれていかれて、その時常務(我が社のナンバースリーくらい)も一緒に行ったりするので、そ の知らない人は何者かと思って帰ってから社員名簿調べてみたら、うちの取締役本部長だったりして。知らねえよそんな人。

結局、そこは駄目だったのだが、しかも私の対応がまずかったとか後で部長に叱られたのだが、その後本部長に私の席のそばまで来られてじきじきに業 務履歴書を書き直させられた。私が社内をうろついているのが、よほど目障りだったらしい。翌週会議が終わってエレベータ前で本部長に会ったらいきなり「決 まったから」とか言われたのであった。

面接もしてないのに、「来週から行って貰う」というのである。よく判らないのだが、多分同じ銀行の別の部署である。寝ているところに耳に水をぶっ かけられたようなものだった。結構長期の社内プロジェクトを始めるための会議に出た直後なのに。中堅幹部(部課長)とトップ(本部長)の意志疎通が全然で きてないって。

まあいい。社内で肩身が狭い思いをするよりは、少しでも金を稼げるならそっちの方がマシだ。ていうか、このままハンパ仕事ばっかだといつ子会社に 強制移籍ということになるかもしれん。会社というのは、そういうところは実に冷たいのである。こないだも、私の昔の部下が人事部に異動させられていた。 まったくもって人事部で役に立つ奴ではないので、あれは多分アレだな。奴に続く前に、私も何とか稼げるようにならないと。

新しいご主人様が優しい人だといいのだが。

生活の中の法律相談ブログ

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